このページの要点
- キャンセル料は、基準日・区分と割合・準備費用との見合い・他の請求との関係の四点を条文に書く。
- 事業者間の契約は消費者契約法9条1項1号の対象外だが、民法420条の賠償額の予定、公序良俗、信義則による相当性の検討は残る。
- 中止は「通知が到達した日」を基準にし、方法・宛先・時間外の扱い・暦日か営業日かを決める。縮小や延期は条を分けて書く。
- 請ける側が小規模なときは、取適法やフリーランス法の明示・支払期日・給付内容の変更の規律を確認する。
結論:事業者間のキャンセル料は「基準日」「区分」「何に見合うか」「他の請求との関係」の四点を書く
企業や団体から催しの運営を請ける、会場を押さえる、手配先に人員や機材を頼む。こうした事業者どうしの契約では、実施日の直前になって中止や縮小が決まったときに、どこまで費用を負担するのかが書かれていないと、準備を進めていた側だけが損をします。参加者が個人の場合の取消料は、消費者契約として別の規律がかかるため、このガイドでは扱いません。ここで扱うのは、法人や事業を営む個人どうしの契約で置くキャンセル料の条項です。
実務でよく見られる整理は、次の四点を条文に書くことです。一つ目は、いつの時点で中止や縮小が決まったとみなすのか(基準日)。二つ目は、実施日からさかのぼってどの区分にいくらの割合を掛けるのか。三つ目は、その金額が何の費用に見合うのか。四つ目は、キャンセル料を払えば他の請求は生じないのか、それとも実費が別に上乗せされるのか。この四点が曖昧だと、中止の連絡を受けた日の数え方や、割合の根拠をめぐって争いになります。
このページで確認すること
- 基準日:中止や縮小の通知を「発した日」ではなく「相手が受け取った日」とする書き方と、その確認方法。
- 区分と割合:実施日からさかのぼる区分を何段階にするか、割合の掛け先(見積額、参加予定数×単価、委託料の総額)をどう決めるか。
- 何に見合うか:中止の決定時までに受け手が負担した準備費用に相当する、という位置づけを条文に書く意味。
- 他の請求との関係:キャンセル料を払えば足りるのか、実費や第三者への解約料は別立てなのか。
- 規模の縮小:人数が減った、部門やグループ単位で辞退した、日程を移した、というときの扱い。
- 請ける側が小規模な事業者や個人のときに、発注側の取消しが法律上どう見られるか。
このページは、事業者間の契約書にキャンセル料を置くときの設計に絞って説明します。運営そのものを任せる契約の全体像はイベント運営の業務委託契約書のページで、荒天や会場側の事情による中止の判断は荒天・海上・屋外の中止基準と運用のページで扱います。
事業者間では何が違うのか:消費者契約法の枠の外にあるが、自由に決められるわけではない
個人の参加者に取消料を求める場合は、消費者契約法9条1項1号が、解除に伴う損害賠償の額を予定する条項などで、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効としています。この規定は、消費者契約、つまり消費者と事業者のあいだの契約に適用されるものです。消費者契約法2条は、消費者を「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)」と定め、事業者を「法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人」と定めています。法人や団体が相手であれば、その契約は消費者契約にはなりません。
ただし、そこで話が終わるわけではありません。民法420条は、当事者が債務の不履行について損害賠償の額を予定できること、予定は履行の請求や解除権の行使を妨げないこと、違約金は賠償額の予定と推定されることを定めています。キャンセル料は、この賠償額の予定や違約金の性質を持つと整理されるのが一般的です。そのうえで、あまりに実態とかけ離れた金額は、公序良俗(民法90条)や信義則(民法1条2項)の観点から、全部または一部の効力が争われる余地があります。事業者間だから何を書いても有効、とはいえません。
参加者向けの取消料と、事業者間のキャンセル料の違い(考え方の整理)
| 比べる点 | 個人の参加者に求める取消料 | 事業者間で求めるキャンセル料 |
|---|---|---|
| 主な規律 | 消費者契約法9条1項1号(平均的な損害を超える部分は無効)、同10条など | 民法の賠償額の予定(420条)、公序良俗(90条)、信義則(1条2項)。当事者の規模によっては取適法やフリーランス法も問題になる |
| 区分の根拠 | 同種の契約の解除に伴い生ずべき平均的な損害から説明できること | 受け手が決定時までに負担した準備費用の発生の仕方から説明できること |
| 説明の求め | 消費者から求められたときの算定根拠の説明努力(消費者契約法9条2項) | 法律上の定めはないが、契約交渉の場で根拠を示せると合意が得やすい |
| 争われ方 | 条項の一部が無効とされ、超える部分を返す形になりやすい | 予定額の相当性、実際の損害との関係、準備費用の立証が争点になる |
| 書き分けの要否 | 個人向けの規約に置く | 契約書または個別の覚書に置き、参加者向けの規約とは分ける |
もう一つ、事業者間でも注意が要る場面があります。運営会社が自社の標準のひな形を多数の相手に画一的に当てはめている場合は、民法548条の2が定める定型約款に当たり得ます。定型約款に当たる場合は、相手方の権利を制限し義務を加重する条項で、信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意をしなかったものとみなされる(同条2項)という規律がかかります。個別に条件を詰めた契約書であれば通常は問題になりませんが、申込書に「当社所定の取消条件による」とだけ書き、細則を別ページに置く形は、この点の検討が必要になります。
基準日の書き方:中止の通知が「いつ届いたか」で区分が変わる
キャンセル料の区分は、実施日からさかのぼって数えます。そのため、中止の連絡がいつ届いたかによって、同じ中止でも適用される割合が変わります。民法97条1項は、意思表示は通知が相手方に到達した時から効力を生ずると定めています。契約を解除する意思表示も、相手方に対する意思表示としてされるものです(民法540条1項)。したがって、条文に何も書かなくても、原則は到達した時が基準になります。それでも条項に書く理由は、到達の判断が実際には曖昧になりやすいからです。
条文例中止・縮小の通知と基準日(書き方の例)
- 甲は、本件業務の全部又は一部を甲の都合により中止し、又は規模を縮小しようとするときは、書面(電子メールを含む。)により乙に通知する。
- 前項の通知は、乙が指定する連絡先(契約書末尾に記載)に到達した時に、乙に到達したものとみなす。ただし、営業日以外の日又は営業時間外に到達した通知は、次の営業日の始業時に到達したものとみなす。
- 第4条に定めるキャンセル料の区分は、乙が前項の通知を受領した日を基準として判定する。
営業日を基準にするか、暦日で数えるかは、区分の日数の意味を変えます。どちらを採るかを決め、条文の中で「暦日」「営業日」と明記します。
基準日の書き方で実際に分かれるのは、次の点です。まず、通知の方法を電子メールに限るのか、書面も含むのか。次に、通知の宛先を契約の窓口に限るのか、現場の担当者への連絡でも足りるのか。最後に、通知が休日や夜間に届いた場合の扱いです。ここを決めておかないと、「前日の夜にメッセージで伝えた」「いや、窓口には翌日の午前に届いた」という食い違いがそのまま割合の差になります。
中止の通知から精算までの流れ(一般的な例)
- 通知発注側が中止や縮小を決め、書面で通知する連絡先は契約書に記載された窓口。口頭や現場担当者への伝達は、後から確認できる形で書面に残す。
- 到達受け手の窓口に通知が到達した時点が基準日になる休日や時間外の到達は、次の営業日の始業時とみなすなど、扱いを条文で決める。
- 判定基準日を実施日から数えて、どの区分に当たるかを決める暦日か営業日かで結果が変わる。区分の端の日付(たとえば区分の境目の日)をどちらに含めるかも明記する。
- 請求受け手が、基準額に割合を掛けた金額を請求する請求書に区分と基準日、掛けた割合、基準額の内訳を記載する。
- 精算支払期日までに支払い、以後は他の請求をしない実費の別立てがある場合は、その範囲と証憑の提出を決めておく。
区分の日数や割合は、事業の性質と準備の進み方で決まります。このガイドでは具体の数字を示さず、「○日前まで」「○%」の形で整理します。
区分と割合の設計:準備費用の「増え方」に合わせて、段階を決める
区分の数や割合を決めるときに、先に考えたいのは、中止が決まる時期ごとに、受け手がどれだけの費用をすでに負担しているかです。実施日の遠い時期なら、企画や人員の仮押さえ程度で、戻せる費用が多いはずです。実施日が近づくと、人員の確保、資材の発注、会場や宿泊の予約、外部への委託が順に動き、戻せない費用が増えます。直前になれば、ほぼ全額が確定します。この「増え方」を区分に写し取るのが、割合の設計です。
準備の進み方と、キャンセル料が見合う費用の種類(考え方の整理)
| 実施日までの時期 | 受け手が負担していることが多い費用 | 区分に反映するときの考え方 |
|---|---|---|
| 早い時期 | 企画の検討、担当者の仮押さえ、事前の打合せ | 割合は低く置く。戻せる費用が多く、他の仕事に振り向けられる余地もある |
| 中間の時期 | 人員の確保、資材の発注、外部の手配先への発注、会場の本予約 | 割合を段階的に上げる。外部に支払う解約料が発生する時点を、区分の境目に合わせる |
| 直前 | 会場や手配先の解約料の確定、人員の確定、仕入済みの資材 | 割合を高く置く。資材などの実費は、別立てにするか、割合に含めるかを明記する |
| 当日・開始後 | 全額に近い費用、当日に確保した人員の待機分 | 「中止」ではなく「実施後の打切り」として、実施した部分の報酬との切り分けを決める |
割合を掛ける基準額は、三つの取り方があります。一つは、契約書に定めた委託料や見積額の総額に掛ける方法です。もう一つは、参加予定数に単価を掛けた額に掛ける方法で、人数に応じて費用が増減する業務に向きます。三つ目は、確定した実費に掛ける方法ですが、実費の立証が前提になるため、小さな契約には手間が大きくなります。どれを採るにしても、税込か税別かを明記します。税の取扱いそのものはこのガイドの範囲外ですが、「基準額は税別(または税込)の金額とする」の一文がないと、割合の掛け先がずれます。
書き方の例(一般的な例) 割合と基準額の書き方
基準額
理由全部が中止になるのか、一部の縮小なのかで掛け先が変わる。対象部分を明記すると、縮小の場面でも同じ条文で処理できる。
区分の境目
理由区分が重なる、または抜けると、その日の中止にどの割合を掛けるのかが決まらない。
割合の根拠
理由予定額が準備費用に見合うことを、当事者が合意した前提として条文に残せる。後から過大と争われたときの説明の出発点になる。
業務の性質によっても、区分の置き方は変わります。人員を提供する型の運営では、人員の確保の時期が費用の節目になります。成果物や資材を伴う型では、発注や製作の時期が節目です。会場や宿泊、輸送の手配を伴う型では、外部の解約料の発生時期が節目になります。自社の業務がどれに近いかを先に確認し、その節目に区分の境目を合わせると、割合の説明がしやすくなります。
業務の型ごとの、区分の境目の置き方(考え方の整理)
| 業務の型 | 費用の節目になりやすい時期 | 区分を置くときの注意 |
|---|---|---|
| 人員を提供する型 | 担当者を確定してスケジュールを押さえた時期、研修や事前準備を始めた時期 | 人員は他の仕事に振り向けられる場合があるため、振り向けられた分を考慮するかどうかを決める |
| 資材・成果物を伴う型 | 資材を発注した時期、製作や印刷を始めた時期 | 作り始めた後は戻せない。仕入済みの資材の実費は、別立てにするか割合に含めるかを明記する |
| 会場・宿泊・輸送の手配を伴う型 | 会場や宿泊の本予約、輸送の手配、外部の解約料が発生し始める時期 | 外部の解約料の段階的な増え方と、自社の区分を対応させる。外部の規約を契約の付属資料にする方法もある |
| 企画・制作を伴う型 | 企画の確定、制作物の着手、広報の開始 | 広報を始めた後の中止は、取引先や参加者への影響が大きい。広報の訂正に要する費用の扱いも決めておく |
見積書や申込書と、契約書の関係も確認が要ります。見積書にキャンセル料の記載があり、契約書にも別の記載があるときは、どちらが優先するかで請求額が変わります。契約書に「見積書その他の付属書類と本契約の内容が異なるときは、本契約が優先する」と書くか、反対に、個別の見積書を優先させる場合は、その旨を書きます。優先関係が決まっていないと、キャンセル料の割合そのものが争点になります。
規模の縮小・延期・振替:「中止」以外の変更をどう扱うか
実際の取消しは、全部の中止だけではありません。参加する部門やグループが減る、一部の団体が辞退する、人数が見込みを下回る、日程を後ろにずらす、といった変更が先に来ます。条文が「全部の中止」だけを想定していると、縮小のときに何も請求できないか、反対に、一部でも変更があれば全額が請求できると主張されて争いになります。縮小の場合は、減った部分に単価を掛けた額に、通知を受けた日を基準とする区分の割合を掛ける形が、実務でよく見られます。
確認の問いと理由縮小・延期・欠席を条文で分けるときの確認の問い
参加予定数が減ったとき、どの時点の人数を「確定」とするか。
申込時点の人数のまま請求するのか、確定の締切日を置いてその時点の人数で精算するのか。締切後の増減の扱いも決めておく。
個々の参加者が当日に欠席した場合は、縮小に当たるのか。
当日の個別の欠席まで縮小に含めると、毎回キャンセル料が発生してしまう。個別の欠席は費用の変動として扱わない、と書くことが多い。
延期は中止と同じ扱いか。
延期の場合は、振替日の条件(実施内容、人員、費用)を改めて協議する旨と、振替日に人員が確保できなくても債務不履行にならない旨を、あわせて書くことが多い。
発注側の内部の事情による中止は、不可抗力に含めるのか。
行事の重複や担当者の都合は、不可抗力ではなく発注側の都合として、キャンセル料の対象にするのが一般的。不可抗力の範囲は別に列挙する。
受け手の側の事情で実施できなくなったときは。
受け手の人員不足などで実施できない場合は、キャンセル料ではなく債務不履行の問題になる。この場合の損害賠償や代替手配の義務を別に置く。
全部の中止と縮小を同じ条文に入れると、読み手が混乱しがちです。条を分けて、縮小の条には「減少する部分」を基準額とする旨を書くと、適用場面が明確になります。
双方に責任のない事情で実施できなくなった場合は、キャンセル料とは別の整理になります。民法536条1項は、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は反対給付の履行を拒むことができると定めています。つまり、天災などで実施ができなくなれば、原則として発注側は報酬の支払を拒める立場にあります。一方、同条2項は、債権者の責めに帰すべき事由によって履行できなくなったときは、反対給付の履行を拒めないと定めています。発注側の都合による中止は、通常はこちらに近い整理です。この二つの境目を条文で明確にするのが、不可抗力と発注側都合の書き分けです。
「過大」と争われたときに備える:準備費用との見合いを説明できる形にしておく
キャンセル料の金額が高いと感じた側は、支払いを拒み、あるいは減額を求めます。このとき、請求する側は、金額が準備費用に見合うことを説明する必要が出てきます。民法の改正前の420条1項には、裁判所は賠償額の予定の額を増減できないとする文言がありましたが、現行の420条にはありません。現在は、予定額が極端に実態とかけ離れている場合に、公序良俗などを根拠に一部が認められない可能性が否定できない、というのが慎重な見方です。もっとも、個別の事案でどの程度の金額が相当とされるかは、取引の性質や当事者の関係によるため、一般論として線を引くことはできません。
備えとして有効なのは、次の三つです。第一に、契約書の中に、割合が準備費用に見合う旨の合意を書くこと。第二に、準備の進み方を示す資料、たとえば人員の確保や発注の時期を、契約の付属資料または見積書の備考に残しておくこと。第三に、会場や手配先に支払う解約料の発生時期を、割合の区分と対応させておくこと。外部への解約料が実施日の相当前から発生するのに、自社のキャンセル料の割合が低いままだと、差額を自社が負担することになります。
条文例キャンセル料と他の請求の関係(書き方の例)
- 本条に定めるキャンセル料は、甲の都合による中止又は規模の縮小の決定時までに乙が負担した準備費用に相当する額として、甲乙が合意したものとする。
- 甲は、前項のキャンセル料を乙に支払うことにより、当該中止又は縮小について、本条に定めるほか、乙に対する支払義務を負わない。ただし、第○条に定める実費で、乙が第三者に支払い、又は支払うべきこととなったもののうち、甲が事前に承諾したものは、乙の請求により別途支払う。
- 乙は、前項の実費を請求するときは、その内訳及び金額を証する書面を甲に提示する。
キャンセル料に準備費用が含まれるのか、実費を別に請求できるのかを分けておくと、二重取りの批判を受けにくくなります。
反対に、請求される側の注意点もあります。キャンセル料の条項に署名した後で、「高すぎる」と主張するのは容易ではありません。契約の時点で、区分の日数と割合、基準額、外部費用の取扱いを、自社の仕入や手配の実態と照らして確認しておくことが重要です。とくに、区分の一番低い割合の段階に入れる期限が、自社の内部の意思決定の日程より前に設定されていないかを見ます。
請ける側が小規模なとき:取適法とフリーランス法の確認
ここまでは対等な事業者どうしを念頭に置きました。請ける側が個人や小規模な会社で、発注する側が一定の規模を超える場合は、中小受託取引適正化法(取適法)やフリーランス法の対象になることがあります。明示と支払期日の規律は、イベント運営の業務委託契約書のページで整理しています。このページで関わるのは、取引の途中で発注側の都合による変更が起きる場面の規律です。
取適法の対象になるかどうかは、委託の種類と、委託事業者と中小受託事業者の資本金または従業員数の関係で決まります(同法2条8項・9項)。たとえば、イベントの運営のうち役務の提供を他の事業者に委託する場合は、役務提供委託として検討することになります。ただし、役務提供委託には、政令で定める役務に限る区分があり、条文の読み方が複雑です。当てはまるかどうかは、取引の実態と条文で確認が必要です。
中止や縮小の場面で関わりやすいのは、取適法5条2項3号です。委託事業者が、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、給付の内容を変更させたり、役務の提供を受けた後に給付をやり直させたりすることを禁じています。発注側の都合で内容を縮小しながら、すでにかかった準備費用を受託側に負担させる扱いは、この規定との関係で検討が必要になります。フリーランス法にも、同様の趣旨の規定があります(5条2項2号。同条は1項・2項とも、1か月以上行う業務委託(施行令1条)が対象です)。また、フリーランス法は、継続的業務委託の解除や更新しない場合に、少なくとも30日前までの予告を求めています(16条1項)。単発のイベントの運営ではあまり当てはまりませんが、定期開催の運営委託では、契約を終了させる場面で確認が必要です。
小規模な受け手との契約で、キャンセル料の条項を置くときに確認する項目
契約内容の明示
発注側
給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で明示する。中止時の費用の定めもここに含める。
中止・縮小の条件
発注側・受け手
受け手の責めに帰すべき理由がない変更について、準備費用をどう扱うかを、契約書に具体的に書く。
支払期日
発注側
役務の提供を受けた日から起算した一定の期間内に支払う。キャンセル料も同じ視点で期日を決める。
継続的な委託の終了
発注側
継続的な委託を解除する場合の予告期間と、理由の開示の請求への対応を確認する。
取適法とフリーランス法は、対象になる取引の範囲が条文で細かく決まっています。一方的に免責する条項や、受け手だけに費用を負わせる条項を置くときは、それぞれの法律の適用の有無から確認します。
起きがちなこと:キャンセル料の条項で、あとから食い違う場面
実務でよく見られる食い違い
- 中止の連絡を、現場の担当者にメッセージで伝えたが、契約の窓口には届いておらず、基準日の認識が一日以上ずれた。
- 区分の境目の日が、どちらの区分にも入る書き方になっていて、境目の日の中止にどの割合を掛けるかで争いになった。
- 全部の中止だけを想定した条文で、グループ単位の辞退があったときに、請求できるのか、できないのかが決まらなかった。
- 外部の手配先への解約料は、自社が早い時期から負担するのに、受けた側のキャンセル料の割合は低いままで、差額を自社が抱えた。
- 参加予定数に単価を掛ける方式で、「確定人数」の締切日がなく、直前の人数の増減が請求額の争いになった。
- 不可抗力の範囲に、発注側の行事の重複や担当者の都合まで含めて読まれ、キャンセル料を払う側がそれを理由に支払いを拒んだ。
- 契約書にはキャンセル料の定めがなく、申込書や見積書に別の条件が書かれていて、どちらが優先するかが決まらなかった。
- 請ける側が小規模な事業者だったが、発注側が内容の変更を一方的に決め、準備費用の負担を受け手に求めて、取引の適正を問われた。
これらの多くは、基準日、区分、基準額、実費の扱い、不可抗力の範囲という、五つの条文の書き方に戻ります。参加者向けの取消料の細目は、習い事・教室・イベントの規約を扱う別のガイドに詳しくあります。ここでは、事業者間の契約で、書面に何を残すかに絞って整理しました。契約の連鎖全体の中でこの条項がどこに位置づくかは契約の連鎖の全体像のページで確認できます。
よくあるご質問
事業者間のキャンセル料にも、消費者契約法9条1項1号は適用されますか。
相手が法人や、事業のために契約する個人であれば、その契約は消費者契約に当たらないため、9条1項1号は直接は適用されません。ただし、民法420条の賠償額の予定として、また公序良俗や信義則の観点から、金額の相当性が争われる余地はあります。相手が個人の名義で、事業とは関係なく申し込んでいる場合は、消費者契約に当たることがあるため、申込みの名義と目的を確認します。
中止の通知は、メールで足りますか。口頭でもよいでしょうか。
民法上は、意思表示の方式に決まりはなく、口頭でも成立します(民法522条2項の考え方)。中止の通知の効力は、民法97条1項により、相手方に到達した時から生じます。そのため、基準日の判定に使えるよう、契約書で通知の方法と宛先を書面または電子メールに限る例が多く見られます。口頭だけでの連絡は、いつ到達したかを証明できず、区分の判定で争いになりやすいため、後から確認できる形で残すのが実務的です。
実施日の何日前を区分の境目にするのが適切ですか。
決まった数字はありません。外部の手配先に支払う解約料が発生する時点、人員を確定する時点、資材を発注する時点など、受け手の費用が増える節目に合わせて決めるのが一般的です。自社のキャンセル料の区分が、外部への解約料の発生より遅い時期に設定されていると、差額を自社が負担することになるため、仕入や手配の実態と照合して決めます。
キャンセル料を払えば、他の損害賠償は請求されませんか。
契約書にその旨を書いたかどうかで決まります。「キャンセル料の支払により、本条に定めるほか支払義務を負わない」と明記すれば、原則として追加の請求を排除できます。一方、民法420条2項は、賠償額の予定が履行の請求や解除権の行使を妨げないと定めています。実費を別立てにする場合は、その範囲と証憑の提出を条文に書いておくと、後で食い違いにくくなります。
請け負う側が個人事業主のとき、発注側が一方的に中止できますか。
契約書に中止の条項があれば、その条件に従うのが原則です。ただし、発注側が一定の規模を超える場合は、取適法やフリーランス法により、受け手の責めに帰すべき理由がない給付内容の変更などが禁止されることがあります(取適法5条2項3号、フリーランス法5条2項2号など。フリーランス法の5条は1か月以上の業務委託が対象です)。中止に伴う費用の負担を受け手に一方的に回す条項を置くときは、適用の有無を条文で確認することが必要です。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、契約の内容や運営の仕組みによって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索(法令API)で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 観光庁 / 消費者庁 / 気象庁