イベントや大会、催事、体験ツアーは、主催者だけで成り立つことはまれです。運営を請ける会社、会場、出店者、手配先、協賛者、そして参加者のあいだの契約が、一つの連鎖として動きます。ここでいちばん起きやすいのは、中止や事故が起きたときに、誰が誰にどこまで負担するのかが書かれていないことです。このガイドでは、「主催者」と見られる事情、運営会社への委託、大会などの開催権の許諾、事業者間のキャンセル料、会場・道路・飲食の確認事項、出店者との精算、参加費を運営者が預かる仕組み、体験・ツアーの手配先との提携、旅行業法との線引きで変わる書面、荒天時の運用、保険と賠償までを、条文と一般的な書き方に沿って整理しています。イベントを企画する方、運営を請ける会社、出店・出展や手配に関わる事業者が、契約書を整える前に押さえておきたい点をまとめました。

イベントを企画・主催する方

イベントの会場に人が集まる様子

契約の連鎖と、主催者と見られる事情

イベントでは、主催者、運営会社、会場、出店者、手配先、協賛者、参加者が、それぞれ別の契約で結ばれます。どの契約がどこにつながり、食い違ったらどれが優先するかを最初に整理します。

名義を貸しただけ、運営を請けただけのつもりでも、募集・代金の受領・内容の決定・広報を誰が行っているかによって、参加者から主催者として扱われることがあります。判断の観点を押さえます。

運営を任せる側・請ける側の方

打ち合わせ中の机と書類

運営委託契約書と、開催権の許諾

運営を任せる契約では、準委任か請負か、参加者数などの成果を約束するのかどうか、中止や縮小を決めるまでの準備費用をどう精算するのかが分かれ目になります。

大会のルールや名称を借りて各地で開催する場合は、開催権の範囲、開催の義務、参加費が誰の収益になるか、終了後の名称の使用停止まで契約で決めます。

直前の中止に備えたい方

予定表の日付に印を付けている様子

事業者間のキャンセル料と、荒天時の運用

企業や団体、会場との契約では、通知を受けた日を基準に、実施日からさかのぼる区分ごとに割合を決める書き方がよく見られます。規模の縮小や準備費用との関係も決めておきます。

屋外や海上の催しでは、中止の基準を警報や海況などの客観的な指標に結び付け、判断する人と時刻、代替案、再告知の方法まで運用として決めます。

会場・出店・許可を確認したい方

確認項目に印を付けているチェックリスト

開催前の確認事項と、出店者の精算

道路での催しや露店、興行場、飲食の提供、雑踏の警備など、開催前に確認が必要な事項があります。誰が確認し、許可を取った者と契約の責任者を一致させるかを契約に書いておきます。

催事に出店者を集める会社と出店者の契約では、日時・会場・出店料・取消の条件を個別の覚書で決める構造や、会場側の判断による中止の扱いが論点です。

体験・ツアーを募集・手配する方

ツアーの移動に使う車両

手配先との提携と、旅行業法の書面の違い

宿泊や車両、ガイドなどを手配先と組んで提供するときは、手配先の事故や遅延を募集した側がどこまで負うのか、管理の及ばない時間帯の扱いを提携の契約で決めます。

登録のある旅行業者と組む形にしたとき、参加者への取引条件の説明、書面の交付、広告、標識、名義の利用の扱いが変わります。参加費と旅行費用を分けて募集する場合の注意点も整理します。

事故・保険・参加費の預かりを整理したい方

屋外の撮影機材と空

保険と賠償の書き方、参加費の精算

主催者賠償責任保険、参加者の傷害保険、出店者の保険など、保険の種類ごとの役割と、保険で足りない部分を契約書にどう書くかを整理します。

参加費を運営者が預かって手数料を引いて精算する仕組みでは、返金の主体、精算額からの戻し方、収納代行にあたるかの確認が論点になります。

このガイドの解説ページ

よくあるご質問

参加者向けの規約と、このガイドで扱う契約は何が違いますか?

参加者向けの規約は、参加者との取消料、返金、免責、撮影、未成年の参加などを定める書類です。このガイドは、その手前にある事業者間の契約を扱います。主催者と運営会社、開催権を与える側と受ける側、会場、出店者、手配先のあいだで、中止や事故のときに誰が誰にどこまで負担するかを決める契約です。参加者向けの規約の細目は、別のガイドで扱っています。

名義を貸しただけでも、主催者として責任を問われることはありますか?

一律には決まりません。募集を誰が行うか、参加費を誰が受け取るか、内容を誰が決めるか、広報を誰が行うかなどの事情から、参加者から見て誰が主催者かが判断されます。規約に「当社は主催者ではない」と書いても、実態がそれと違えば、書いただけでは足りないことがあります。共催・後援・協賛・運営受託の違いを契約書に書き分けておくことが大切です。

事業者間のキャンセル料にも、消費者契約法は関係しますか?

消費者契約法は消費者と事業者の契約を対象にしているため、事業者どうしの契約には直接は当てはまりません。ただし、事業者間でも、キャンセル料が準備費用に比べて過大だと争われる場合があります。通知を受けた日を基準に、実施日からさかのぼる区分ごとの割合を決め、準備費用に見合う旨を契約に書いておくと、定めの根拠を説明しやすくなります。

道路や会場の許可は、誰が確認するのですか?

法律が一律に決めているわけではなく、契約で決めておくことが大切です。道路での催しや露店は、道路交通法77条により警察署長の許可が必要になる場合があり、興行場は興行場法に基づく許可を受けた施設かどうかを確かめます。飲食の提供や雑踏の警備にも確認事項があります。主催者、運営会社、会場、出店者のうち誰が確認するのかと、許可を取った者と契約の責任者を一致させる点を、契約書に書いておきます。

参加者を募集して体験ツアーを組むとき、旅行業法はどう関係しますか?

運送や宿泊などのサービスの手配を、報酬を得て行う場合は、旅行業法の旅行業に当たるかを確かめる必要があり、当たる場合は登録を受けた事業者が行います(旅行業法2条・3条)。登録のある旅行業者と組む形にしたときは、取引条件の説明、書面の交付、広告、標識、名義の利用などの扱いが変わります。登録の要否の判定は個別の事情によるため、このガイドでは、組んだ後の書面の違いを中心に整理しています。

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監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月15日